STORY
世界有数の大富豪フウ家の当主レイモンド・フウが亡くなった。
遺産を巡り火花を散らしていたブリジット、クリストファー、アンドリューの3姉弟の前で執事トニーが発表した相続人は、誰もその存在を知らない隠し子“ミシェル・フウ”だった。
ミシェル捜しが続く中、10兆円とも言われる遺産を狙い、我こそはミシェルと世界中から詐欺師たちが“伝説の島”ランカウイ島に大集合!
そして、ダー子、ボクちゃん、リチャードの3人も、フウ家に入り込み、華麗に超絶大胆にコンゲームを仕掛け始める…
はずが、百戦錬磨のコンフィデンスマン・ダー子たちに訪れる最大の危機!
誰がフウ家の当主の座を射止めるのか!?世界を巻き込む史上最大の騙し合いが始まる!!
公式サイトより
テレビシリーズ「コンフィデンスマンJP」の映画版です。
私はテレビを何度か見た程度ですが、楽しめました。
これまでの話をまったく知らなくても大丈夫だとは思います。
もちろんこれまでのテレビシリーズと前作の映画「ロマンス編」を見ていたほうが3倍楽しめるでしょう。
……簡単すぎるようですが、紹介はここまでにしようと思います。
せっかくの騙し/騙されのコンゲームムービーなので、ぜひ前情報をあまり入れずに楽しんでください!
エンドロールが始まっても最後まで席は立たずに
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【注意】これから下はネタバレとなります
「コンフィデンスマンJP プリンセス編」のアドラー的考察
いや〜おもしろかった〜
騙し/騙されのコンゲームムービーとして、単純にじゅうぶん楽しめる映画でしたが、観終わって思ったのは「これ、自己啓発系ムービーじゃん」。
ここからは、アドラー的視点から「コンフィデンスマンJP プリンセス編」について考察していこうと思います。
イメージが先、現実は後
莫大なフウ家の遺産をいただくために、ダー子は身寄りがなく学校にもろくに通わせてもらっていない少女のコックリをフウ家の末子:ミシェル、自分はその母親と偽ってフウ家に乗り込みます。
そこでコックリとダー子は、4ヶ月後の後継者お披露目パーティに向けて、フウ家の人間としての語学やマナーなどの教育を受けるハメになりました。
コックリは、これまで運命に流されるがままに、受け身で生きてきました。
ダー子がコックリに詐欺の片割れとしてミシェルになりすますよう指示すると、それに素直に従ってシンガポールまで来ます。
フウ家で語学からテニスまで厳しい教育が始まると、最初はドジっ子で失敗続きながらも、コツコツと勉強を続けていきます。
ダー子は、コックリに
「私たちは何にでもなれる。なりたいと思ったものになれる」
「嘘も信じればそれが真実」
と語りかけます。
4ヶ月後のパーティで、コックリは学んできたことをすべて身につけ、美しい後継者としてスピーチを立派にこなします。
そこにフウ家に恨みを持つ男が爆弾を身につけて乱入してきますが、彼の心をコックリはその誠実さと優しさで溶かし、大きな危機を未然に防ぎました。
そして、フウ家の執事トニーと3きょうだいとともに行われた跡取り決定の話し合い。
「母親と離れてひとりで来るように」と言われたコックリは、たったひとりでその場に臨み、自分のちからでフウ家の跡取りとして認められたのです。
これはまさしく、アファメーションと努力の結晶。
「私はプリンセス」とイメージして、コツコツ努力を続ければ、貧しい身寄りのない少女でもプリンセスになることができるのです。
コックリの素直な心が切り開いた未来です。
冒頭で引用されたヘミングウェイの言葉「他人より優れていることが高貴なのではない。本当の高貴とは、過去の自分自身より優れていることにある」がここにつながります。
ダー子はアドラーマザー!?
ダー子は、スリの手下として使われて虐待を受けていたコックリをなりゆきで拾い、フウ家を騙すためのメンバーとして迎え入れます。
そして、「信じればそれが真実。あなたはミシェル」と言い続けます。
最後の別れの場面では、「私は偽物」と言うコックリに、
「信じればそれが真実。
あなたは本物のプリンセス。
世界中のあなたみたいな子供たちを救いなさい。
私たちはなりたいと思ったものは何にでもなれる」
と言います。
それを聞いてコックリも「私はミシェル・フウ」と言葉にするのです。
ダー子は、コックリがプリンセス・ミシェルになるまでを導き、お金が取れなかったにもかかわらず、プリンセスになったあとはすっと身を引いていきます。
そんなダー子にミシェルは「お母さん」と抱きつきます。
「ああ、親の役目というのは、子どもが親なしで生きていけるようにすることなんだよな」と思うと涙が止まりませんでした。
「カリオストロの城」の、ルパンとクラリスの別れの場面を思い出したよ
そしてそこでもダー子はあっけらかんと楽しそうなんですよね。
ミシェルのこれからの人生をじゃましないためにお金は取らない。
そして、恩着せがましいところもなければ、「ATMができた」という軽口とは裏腹に、今後ミシェルにたかることもないでしょう。
ミシェルと道は別れてしまったけれど、コンフィデンスマンとしての人生を仲間と一緒に心から楽しんでいるダー子、最高ですね。
これぞ究極の「課題の分離」!?
最後に
この映画を語るのに避けて通れないこと、それは、映画の公開に合わせるかのように命を絶ってしまった三浦春馬さんと竹内結子さんのことです。
ふたりとも映画の中では生き生きしていて、キラキラしていて、どこまでが現実でどこまでが虚構なのかわからなくなります。
報道で知るだけですが、おふたりとも親との関係に問題を抱えていたと言います。
テレビや映画の中のスターになっても、自分自身が親となっても、それでも消せない、それだからこそ深くなることもある闇。
どうか、世界中の子どもがミシェルになれますように、そう願わずにはいられません。