オリンピックで金メダルを獲るためだけに復帰したテッサ・ヴァーチュー&スコット・モイア組。
しかし、今シーズンは常にパパダキス&シゼロン組の後塵を拝してきた。
グランプリファイナルでもあっさりとパパシゼ1位、テサモエ2位。
「銀メダルはいらないの」とばかりに、メダルセレモニーが終わるやいなやメダルを首から外してしまったテッサの姿が印象的だった。
どちらも素晴らしいカップルだけど、できればテサモエに金メダルをと思っていた。ファイナルでの観客の声援も、明らかにテサモエに対するほうが大きかった。テサモエは、我々ファンの人生のいくばくかも背負っているのだ。
●ショートダンス
先に登場したのはテサモエ。ラテンにストーンズ! 本当にこのプログラムは大好きだ。コテコテの暑苦しいラテンではなく、クールに、スタイリッシュに、でも情熱的に滑り上げる。二人の「強さ」がよく出たプログラム。
続いてパパシゼ。彼らは滑りがクリーンで隙がない。ただ、衣装にアクシデントがあり、ツイズルでわずかな乱れが出て2位。
1位テサモエと2位パパシゼとの点差は1.74。パパシゼのフリーの強さを考えると、この点差はテサモエにとってセィフティリードとは言いがたい。ちょうどグランプリファイナルのフリーでの彼らの点差が1.76。
オリンピック団体のときのテサモエのフリーの得点は118.10。これはファイナルのときを下回っている。もしパパシゼがまた歴代最高を更新したら逆転されてしまうよ。
●フリーダンス
フリーの滑走順はパパシゼが先。プログラムはベートーベンの「月光」。彼らの若くて軽やかで流れのあるスケーティングは、月の光、森のざわめき、流れる風、そういうものを感じさせる。ちょうど男子におけるパトリック・チャンのように、他のスケーターとは次元が違う感じがする。
非の打ち所がない演技で、歴代最高の得点!
ショート3位となりながらも、メダルの重圧に沈んだハベドノを挟んで、最終滑走がテサモエ。
曲は「ムーランルージュ」。光と風を描写したパパシゼに対して、絡み合う男女の熱情を演じる。昔はスコットが上手でテッサが不安定に思えたけれど、復帰後はスコットのほうが弱ってテッサのほうが安定しているように見えた。
しかし、今日はスコットの気合いが半端ない。ふたりの強い思いがプログラムから溢れ出す。しかし足は正確にステップを踏み、テレビ画面のカウンターには要素がクリーンだったことを示す緑色が並んでいく。
スケートに対する愛も、情熱も、欲望も、意地も、何もかも受け止めてスケーティングに昇華した、そんな滑りだった。
カウンターの技術点は両者ほぼ同じ。
テサモエの点数が出る。
フリーの得点はパパシゼが上。しかし、合計得点ではテサモエが歴代最高を出して、
金メダル!!!
ダンスの細かい採点方法はよくわからないのだけれど、パパシゼのほうが優れているのだろうとは思う。
テサモエとメリチャリがアイスダンスにスポーティーさを持ち込んで、それまでのダンスや他のカップルを古くさいものにしたように、パパシゼと並ぶとテサモエのダンスはある意味ありきたりなものに見える。
もしパパシゼのショートにミスがなかったら、もしフリーの滑走順が反対だったら、メダルの色はどうなっていたのだろう……
それでも、平昌ではテサモエが金メダルを獲ったことが本当にうれしい!!!
パパシゼは北京で!
この2組以外に好きだったプログラムは、カペラノの「ライフ・イズ・ビューティフル」とボブソロのフリー。
チョクベイのビートルズもよかっただけに、転倒が残念すぎる。
それからかなちゃんとクリス。日本アイスダンスのプログラムの中で一番感動したかも!
テサモエ、カペラノ、ウィバポジェ、チョクベイ、ボブソロ、シブタニズ……
長い間アイスダンスのトップグループだったこの顔ぶれ、それも平昌が見納めか……
本当に幸せなたくさんの時間をありがとう!