町田樹「火の鳥」、鈴木明子「O」をはじめとするフィギュア名作「鳥」プログラムに、今年また素晴らしい作品が加わった。
パトリック・チャンのショートプログラム、ビートルズメドレー。
前半は「ディア・プルーデンス」。
ここで4トゥループ+3トゥループ、3アクセルのジャンプを終わらせると、曲は「ブラックバード」に変わり、ステップシークエンス。ここからはもうパトリックの真骨頂。
黒い小鳥が軽やかに氷上を舞う。
エッジの体重移動だけでここまでスケーティングが伸びるのか! ここまでスピードが出るのか!
そしてこの軽やかさ!! 軽やかで、伸びやかで、愛らしい。
テレビの解説によると、パトリックにとってこの曲は子どものころ家族のドライブでかかっていた曲で、「自由に滑れるような気がするんだ」と言っているそう。
見れば見るほど滑ることの喜びが伝わってくる素敵な素敵なプログラム。
もし神様に「一つだけ願いをかなえてあげるよ」と言われたら、
「神様、私はパトリックみたいに滑りたいです」
とお願いする。
「パトリックと同じエッジに乗って、同じトレースを描いてみたいです」
そのとき世界はどんなふうに感じられるのだろう。