【ネタバレあり】「梨泰院クラス」感想 スアの物語が知りたい

 

 

ブームに乗っかってハマった「愛の不時着」の次はこれでしょう〜 と、勢いに乗って見た「梨泰院クラス」を見終わりました。

前評判どおりとてもおもしろかったのですが、見終わったあとは意外にもモヤモヤが残りました。

以下、何にモヤモヤしたのかについて検証していきます。

「梨泰院クラス」についてというよりは、私のスア愛語りになりますが、それでもいいという方、おつき合いくださいませ。

 

「梨泰院クラス」とは

「梨泰院クラス」とは、2020年にネットフリックスで「愛の不時着」に次ぐ人気を博した韓国のテレビドラマです。

父親を理不尽なかたちで殺された主人公パク・セロイが、ソウルの繁華街、梨泰院に小さな居酒屋タンバムを開き、成功と復讐を果たしていきます。

私はスア派

セロイを挟んで三角関係にあったイソとスアですが、私はだんぜんスア派でした。

でも、物語のスタート、1・2話あたりではスアがヒロイン扱いでしたが、ドラマのビジュアルを見るとイソがヒロインであることは明白。

ドラマの中でも、「与える女・イソ」対「待つ女・スア」という位置づけになり、スアがどんどん劣勢に。

そして、最終的にセロイはイソを選んで、ラストは不純物ゼロのセロイソのラブラブシーンで終わりました。

 

しかし、私はこの展開には不満。

スアは最初のほうこそ人物が丁寧に描かれていました。

しかし、途中からは、やり手のマネージャーとしてタンバムを成功させ、セロイにもガンガンアプローチするでイソに対して、曖昧な態度でセロイが長家から救ってくれるのを待つだけの受け身な女的な描かれ方に堕してしまいました。

 

でも、最終的に長家のチャン・デヒ会長の不正を告発して、セロイが長家を買収することを可能にしたのはスアなんですよね。

スアは自分の力で自分を長家から解放し、セロイの復讐を遂げさせたのです。

スアの歩みを振り返る

会社員として、サラリーマンとして、組織の中で働いていたスア。

入社してからセロイと梨泰院で再会するまでの7年間、「恋愛もせずに働いてきた」とカン専務に言われています。

それはべつにセロイを待っていたわけではないでしょう。

帰る家も頼る親もないスアは、ただ生きていくのに一生懸命だったということ。そこで若くして企画室長になるのですからたいしたものです。

 

その後、セロイと再会するスア。

なぜセロイのタンバムに加わらなかったのだろうと思いますが、自分の人生を考えたときに、これまで築いてきた仕事や収入を捨てられないし、レールから降りるのが怖いというサラリーマン的な感覚もあったのでしょう。

また、チャン・デヒ会長の言う「奴隷根性」的なものが刷り込まれていたという面もあったのかもしれません。

イソ対スアの対比というドラマの構図としても、スアが長家にいるほうが映えるしね

セロイの「おれが長家から解放してやる」というセリフ&イソの「あんたは何もしないでただ救い出されるのを待ってるだけ。私は違う。私はあの人をお金持ちにして、憎い長家を潰してあげるの」というセリフから、スア=待つ女というイメージが作られますが、実際はどうだったのでしょう。

 

いつからチャン・デヒ会長の不正を知り、証拠を集めていたのだろう?

いつからその証拠をもとに長家と会長を破滅させることを考えたのだろう?

「3倍にして返す」という計画はどんなふうに抱いていたんだろう?

 

ドラマで描かれていないスアの物語を考えると、どんどん妄想が膨らみます。

正直なところ、天才的な頭脳を持ち、ソシオパスであるがゆえにまわりの感情にも頓着せずにつき進むイソよりも、凡人で組織の中で夢と保身と人間関係の葛藤に苦しむスアのほうにずっと感情移入できるんですよね。

スアのように美人でも仕事がデキるわけでもないけどね

スアは何かコトが起こっても感情的に反応しません。

セロイはいじめをするグンウォンに感情的に反応して暴力を振るい、結果大きなマイナスを背負うことになります。

スアは長家で屈辱的なことがあってもじっと耐え、証拠を集め、最初で最後の攻撃で確実にとどめを刺しました

それまでの働きで長家に十分な利益はもたらしたでしょうし、自分もとりあえず会社を辞めても残る家と車を確保しています。

そして、セロイ父への3倍の恩返しも。

セロイの父親とスアは、実は似ているんですよね。

セロイの父は、会社を救う味を生み出したたいへんな功労者なのに部長止まり。それでも家族のために一生懸命働いている。

自分が開発したタレを会長の手柄にされても時計ひとつで口をつぐみ、長家が児童養護施設の援護をやめることになっても、会社に対しては異議を唱えず、個人的に施設やスアに対して援助するにとどめます。

 

それだからこそ、妥協をしないセロイを父親は誇らしく思い、スアは「眩しすぎる」と心の中でつぶやくのです。

イソは現代風な衣装をまとった古風な女では

実は、スアが古風な女で、イソが現代風の女という描き方にも違和感があります。

 

イソは頭がよすぎて何でもできてしまうがゆえに「人生なんてむなしい」と言っていました。

しかし、その人生のむなしさを埋めたのは、結局セロイとの恋愛

 

「私が彼の夜を甘くする」と言って、自分の持つ天才的な能力を駆使してセロイを韓国No1.企業の代表に上り詰めさせます。

でも、それってよく見ると、「彼の夢が私の夢なの」と言って男に尽くす女ではないでしょうか。

尽くす女と言っても、最強バージョンだけどね

インフルエンサーだったり、セロイ以上に経営をバリバリこなしたりして、現代の最先端を行っているようですが、実はイソのセロイに対するポジションは、側から見るよりは古風なのではないかと思います。

「梨泰院クラス」で残念だったところ

「梨泰院クラス」、私の中でのピークは、実は7年前に長家の株を買っててお金を持ってた! というところでした。

現代の資本主義での闘いというのは、ただ店の規模や味で競うのではなく、こういうことなのか! と興奮しました。

 

ただ、そのあとは「1億稼ぐのは大変だけど、1億を数十億にするのは簡単だった。100億を1000億台にしよう」と言って、いきなり4年後にビルが建つところまで話が飛びます。

 

いや、それはそうかもしれないけど、1つの店を売れるようにすることと、フランチャイズを大きくすることは全然違うでしょうから、そこのあたりを丁寧に描いてほしかった。

ICの経営陣も、結局タンバムオリジナルメンバーがそのまま垢抜けただけですが、ちょっと無理があるような。

組織が大きくなる中ではまた違う資質を持ったメンバーが入ってきて、違うダイナミズムがあると思うのですが、そのへんはまったくありませんでしたね。

「梨泰院クラス」は経営や人生のテキストとしてとてもおもしろかったので、そういう面で途中からちょっと手抜きになった感は否めませんでした。

 

また、これはネットの感想でも見ますが、最後がセロイとグンウォンとの殴り合いになっちゃったのもどうかと。

イソの誘拐劇は描き方が荒すぎ。

あんなに誘拐したメンバーの面が割れてて、イソとグンスをどうするつもりだったのだろう? 殺すつもりだった? 

イソとグンスに見張りをつけていないのも不自然だし、弱ったイソが逃げるのを追いかけないのも、あんなにフラフラなのにあんなに長い距離を走れているのも不自然。

グンウォンはまた刑務所ですが、傷害罪だとまた数年で出てきちゃうのでは? それって解決になっているのかなあ。

 

最終回で、セロイとチャン・デヒ会長の土下座が描かれますが、セロイの土下座は謝るためじゃなくてイソの情報を知るためだし、膝をついただけで頭は下げてないからちょっと違いますよね。それで会長が満足したというのもズレがあるような。

 

「梨泰院クラス」は途中から最初ほどおもしろくなくなった、という評価は韓国でもあったようですが、でも、非常におもしろいドラマであることは確かです。

オススメです。

スアの人生はこれから

最終回で、スアはセロイの父親のお墓からセロイに祝福の電話をかけます。

ここ、電話じゃなくて、セロイが復讐が終わったことをお父さんのお墓に報告に行ったらスアに会った、というシーンにしてほしかったな。

お父さんとのことを本当に分かち合えるのは、セロイにとってもスアにとってもお互いしかいないと思うんですよね。

いろいろあったけれど、ようやく復讐が終わって、これからはお互いの真の人生を歩むんだね、ということを確認する時間をサシで持ててもよかったんじゃないかと。

お子ちゃまイソには入れない大人の時間を描いてほしかったなと思います。

 

そして、スアは女社長として、自分の店をオープンさせます。

サラリーマンのプロ・会長秘書キム室長が「内部告発をするような人間は誰も雇ってくれない」と言いましたが、社長になっちゃえばノープロブレム

梨泰院の大物がばっちり出資してくれました。

キム室長はICから来た上司にも忠実に仕えるんだろうね

そして、後光の差すイケメンキラキラシェフ、パク・ボゴムが降臨。

いや〜、よかったよ(涙)

イケメンシェフでもいいんですが、美人でやり手の女社長には、これから先まだまだ恋愛のチャンスはいくらでもあるでしょう。

セロイ&イソは「あがり」ましたが、スアの人生はこれからです

長家のやり方も、ICのやり方も見てきているから経験もバッチリ。

スアの人生は、これからもイソをイライラさせるくらい充実したものになるはずです。

 

私が最終回のスアを見て思い浮かべたのは峰不二子

「あるときは敵、あるときは味方。恋人だったこともあるかもね」な〜んて、余裕の微笑みを浮かべてセロイ&イソを見守ってあげてください。

 

スアのこれからの人生に幸あれ!

 

主題歌、名曲です。テンションが上がる〜

 

 

 

 

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